2025年12月10日

クリスマスと世界のお菓子 花田えりこのHomemadeって👍⑨

#このコラムのタグ

#このコラムのタグ

こんにちは。花田えりこです。クリスマスのお菓子といえば、日本では『苺のショートケーキ』というイメージ!しかし、元々世界では様々であり、近年は日本の店頭でもクリスマスのお菓子をよく見かけます。
作っても楽しいスイーツは、クリスマスイベントには欠かせません。

本来クリスマスとは宗教行事であり、”クリスマス”の名前は「キリスト(Christ)のミサ(mass)」を意味する言葉で、キリスト教徒にとってはイエス・キリストの誕生を祝う聖なる日です。誕生日が聖書に明記されているわけではなく、紀元4世紀頃に12月25日と定められ、習慣化しました。
そしてイエス・キリストは貧しく汚い馬小屋で生まれたので、きらびやかなスイーツとむすびつくものでは全くありません。
しかし、救い主イエス・キリストの誕生を賛美する習慣が、世界中に知れ渡って、現代何億人もの人たちが楽しく過ごしている事は、すごいですよね。
世界中で文化として定着しつつありますが、それぞれのお菓子にも大事な意味が込められていることも忘れてはいけないと思います。

◾️苺のショートケーキ :日本

戦後、日本がアメリカの影響を受けて洋風の菓子を取り入れ、日本人の口にあった軽やかな舌触りのケーキがクリスマスに売り出され、日本だけで定番化したそうです。
ただ、アメリカにはクリスマスにケーキを食べるという風習はなかったものですから不思議なものですね。当時の日本で新しく誕生した、クリスマスを祝う独自のスタイルです。
生クリームは雪の白。苺はサンタクロースの赤。
おめでたい時に使われる”紅白”が、当時の日本人の心を掴んだと言われています。

◾️ブッシュ・ド・ノエル :フランス

クリスマスの薪(丸太)という意味で、薪を焚べた暖炉を囲んで夜通しキリストの誕生を待つ意味が含まれています。年輪型やロールケーキが、切り株や薪を模しており、その材料や作り方はさまざまです。薪の灰が魔除けの意味もあり、その風習と掛け合わされたとも言われます。

◾️キャンドル・クリスマスツリー・星 をモチーフとしたお菓子:ヨーロッパ
クリスマスまでの準備期間をアドベント(待降節)と言います。4週間前から始まるので、イエス・キリスト誕生を待つ心の準備として週に1本ずつ”キャンドル”を灯すので、それに準えたお菓子が作られます。
”ツリー”はクリスマスの象徴ですが、生命の象徴として冬の寒さにも強くいつでも緑色を保つ「常緑樹」。古代ヨーロッパ冬至祭で、これを飾るという風習があり、キリスト教における「知恵の樹」「永遠の命の象徴」と融合したと言われています。
また、ツリーのてっぺんに飾る”星”は、イエス・キリストの誕生を知らせた「ベツレヘムの星」を表しています。

◾️シュトレン :ドイツ
アーモンドなどのナッツ類やドライフルーツがたっぷり入っており、洋酒が含まれていることで日持ちします。アドベント(待降節:キリスト誕生を待つ期間)に、少しずつスライスして食べるお菓子です。粉砂糖がふんだんにかかっているその見た目は、幼子イエスを包んでいる白い布を模しているとも言われます。

◾️クグロフ:フランス発祥でヨーロッパ各地に広まったお菓子
王冠のような波打つ形状、平和を象徴するリング型。クリスマスのお祝いや贈り物などに、特別な日のために焼くお菓子として親しまれています。歴史は古いので諸説あり、起源をつきとめるのは難しいとされています。レーズンやナッツが多く含まれて贅沢な味わい。イーストを使うお菓子です。

◾️パネトーネ :イタリア
ドライフルーツがたっぷり入り、バターが多くブリオッシュのような味わいで、リッチな大きめのパンです。パネトーネ種が使われ、配合としては卵も多く、ケーキのような感覚なので、寒い時期であっても、クリスマスのお祝いに少し贅沢な気分になれる幸せのパンです。

◾️ガレット・デ・ロワ:フランス

クリスマス(12/25)を少し過ぎますが、キリストの誕生を祝うために、遠く東方から3人の賢者たちがベツレヘムを訪問した事を記念する、”公現祭”を祝うお菓子です。”ロワ”は王様という意味で、この賢者達を指し、キリスト誕生と一年の初めの祝いをかけて、1月6日に食べられるようになりました。
詳しくはコラム「Homemadeっていいね⑦」をご覧ください。

◾️アドベントクッキー:欧米
子供たちがサンタクロースが来るまでに食べるお菓子(!?)と思われているかも知れませんが、そうではなく、イエス・キリストの誕生を待ち望み、心の準備をするために、楽しみを兼ねて毎日1つずつ食べていくお菓子です。
アドベント(待降節)は、先ほどから何度も出てきますが、クリスマスイブ直前の日曜日からさかのぼって4回目の日曜日から始まる期間を指します。なので正確には11月から入ることが多いのですが、カレンダーの12/1からイブまでの24個のクッキーなどが飾られ、楽しむ風習となっています。

◾️アイシングクッキー
クリスマスに限らず、季節を問わずに作られる親しみのあるクッキー。粉砂糖に卵白や水を加えて作る、ペースト状のクリームをクッキーにデコレーションしたものです。
元は白一色で作られていて、表面のツヤツヤな光沢がアイスのように見えることに由来します。
氷や雪と掛け合わせて、クリスマスのシーズンに多く作られ、ツリーに飾ったりします。

◾️ジンジャーブレッド
スパイスの効いた、アドベントクッキーのひとつ。スパイスは体をあたためて風邪を予防する、と、信じられていたので、寒い冬を耐え忍ぶのに作られたと言われています。

◾️ヘクセンハウス
『ヘンゼルとグレーテル』に登場するお菓子の家。ジンジャーブレッドハウスとも言われ、硬く日持ちする材料で作る事の多いものです。クリスマスとは直接関係ありませんが、冬の時期に作るので、時の流れとともにクリスマスのお祝いと融合したようです。


◾️プレッツェル:
幸運や健康を招く縁起の良いお菓子として季節を問わず見かけるプレッツェルですが、これもクリスマス時期に多く見られるには理由があります。
プレッツェルの形が、三位一体(神・子・聖霊)や、キリストの受難を象徴する縄を連想させるものだからです。イタリアの修道士が、子どもたちへのご褒美としてクリスマスに配り、キリストの話をしながら祈ったと言われ、今でもその名残りがあるようです。でも他にも様々な由来もあることも事実です。

◾️リース型のお菓子やパン
リースは、キリストが十字架にかけられた際に頭に乗せられた「いばらの冠」を象徴しています。
輪の形状から永遠に続く終わらない愛と平和を祈願したもので、玄関リースに始まり、パンやスイーツでも象られるようになりました。

このように、クリスマスのそれぞれのお菓子には歴史や言い伝えがあり、キリスト教や欧米の文化風習と、色濃く関わっています。現代の教会、日本でも、キリスト教の教会では聖なるクリスマスをこのように大切に祝っています。
世界各国の伝統や宗教を知ってお菓子を楽しめば、ますます素敵なクリスマスになりそうですね。

コラム執筆:花田えりこ先生

花田えりこ先生

花田えりこ先生

「メロンパンdeコッタ」「本日開店ミニパンやさん」など翻訳本を含め著書多数。食品衛生責任者。パンやスイーツからクラフトに至るまで、幅広く手作りの楽しさを子供たちに伝えています。また、テレビ・雑誌・SNSなどの各メディアでも、作品のプロデュースやレシピを提供。2018年には、メロンパンdeコッタ協会を設立。仲間の講師とともにメロンパンdeコッタレッスンを開催し、講座の収益の1部をチャリティーに役立てていらっしゃいます。

このレシピをシェアする

SNSでシェアしよう!